アンブシュアのトレーニング


多彩な発音のコントロールは、フルートを演奏する際に必要な技術のうちの一つです。
アンブシュアの訓練のために有効な練習をまとめてみました。
フルートでは特に、高音域での柔らかい発音は頻繁に要求されます。
オーケストラの曲では、フルートが目立つ静かな場面でそのようなフレーズが良く出てきます。
そのような時に、私は音を外したりひっくり返ったりして恥ずかしい思いを何度もしているので、また失敗しないよう毎日練習しています。

1、無音からの発音


”ゼロ発進”とも言いますが、フルートにおいて無音から発音することはオーボエなどのリード楽器と比べても容易です。

この練習はチューナーを使用し、できるだけ音程が変化しないように気をつけて練習します。
タンギングは使用せず、無音から入ってください。空気音が大きくならないように注意します。

同様に次の音でも練習します。


2、音程のコントロール


フルートの場合、第3オクターブでは音程が上ずりやすく、逆に第1オクターブでは低くなりがちです。

音程をフレキシブルにコントロールするためには、アンブシュアで可能な限り音程を変化させる訓練が必要です。

指遣いは変えず、またできるだけ楽器を回さないでアンブシュアのみで音程を変化させるトレーニングです。

高音域で可能な限り音程を低く変化させる練習は、アンブシュアの安定感を生み出します。

同様に以下の音でも同じように練習します。

3、ハーモニクス


ハーモニクスを練習することも、アンブシュアのコントロールの良い訓練になります。

H管の場合には、一番低いシで練習します。

20世紀の作品では時々、ハーモニクス奏法が要求されます。

ストラヴィンスキー:バイオリン協奏曲のハーモニクス

さらに低い音に移調すると、アンブシュアのために良い練習になります。

4、低音域のタンギング


ベーム式フルートでは、低音域をはっきりと発音することがとても難しいです。

フルートの改良を行なったベームは、伝統的な円錐形だった管体を円筒形に変えてしまいました。音程の正確性や音色の統一感は獲得することが出来ましたが、低音域のレスポンスは円錐管に比べると悪くなってしまいました。

16分音符の後の8分音符の発音に気をつけて、シングルタンギングで練習します。


次の例では、ダブルタンギングでハッキリと発音します。


プロコフィエフのフルートソナタ

第1楽章の展開部冒頭は、低音の発音が難しい代表的な例です。


更に低い音域に移調して練習することも有効です。


ジョリヴェ作曲『リノスの歌』

練習記号Fの踊りの部分も、低音の発音が難しい有名な例です。こちらも更に音域を下げて練習すると、アンブシュアのための訓練になります。

5、高音域でのタンギング


高音域を弱音で発音することもかなり難しいです。

16分音符が鋭くならないように気をつけて練習します。


高音域での弱音が難しい有名な例では、ドヴォルザークの交響曲第9番『新世界より』の最終楽章があります。

5、オクターブ


オクターブの練習も、アンブシュアの訓練のためにとても有用です。




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