演奏会でやらかした話


 何かと忙しい時期ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

僕は相変わらずダラダラとした毎日を送っておりますが、今年も残りあと1週間しかないことにふと気がついて驚いているところです。

とりあえず今年最後に何か書いておこうと思いましたが、あまりにも何もしていないためネタが見つかりませんでした。

そこで恥をかなぐり捨て、演奏会でやらかした失敗談など書いてみようと思います。


第九にて、一足早い勝利の行進


年末の定番曲といえば、ベートーヴェンの第九で間違いないでしょう。

もう10年も前の話になりますが、音大を卒業間近に控えた駆け出しの僕は、ありがたいことにいくつかのオーケストラからエキストラ奏者として声をかけていただきました。

僕の仕事は、主に2ndやピッコロパートなどを担当して演奏することでした。


その日も、とあるオーケストラから第九のピッコロとして声をかけていただきました。

第九のピッコロは、第4楽章の途中の行進曲からようやく演奏が始まります。

そのため、第1〜3楽章までの約40分間は座ってひたすら自分の出番が始まるのを静かに待っていなければなりません。

演奏会中に40分間座っていると、色々なことを考えてしまいます。

そしてだんだんと自分の出番が近づいてくると、普段は感じることのない緊張をしてしまう事があります。


第九の楽譜を見たことがある方は、このピッコロソロの行進曲が以下のように裏打ちで始まることを知っているでしょう。

第九、行進曲
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この部分を楽譜を知らないで音源だけ聴くと、裏拍ではなく表拍に聴こえます。

駆け出しの僕は、ピッコロのソロが始まる直前にはガチガチになっていました。

指揮者の棒の見方もよくわからない上、どうしても裏打ちが表拍に聴こえてしまい、緊張と混乱でどこを演奏しているのかわからなくなってしまいました。

もうどうにでもなれ!とエイヤッと思い切って吹きました。

残念ながら1拍早かったため、♪レレーミファーと演奏しなければならない箇所が♪レレーレレーミファーとなってしまいました。

勝利の行進が遠くから段々と近づいてくる場面で、一人だけ先に到着してしまいました。

もう10年前の事ですが、いまだにミスした瞬間、周りがスローモーションで見えた事や、その後長々と続くメロディーを演奏しながら感じたことをはっきりと覚えています。

そして第九を耳にするたびにこの時の気持ちを思いだしてしまいます。


つい先日もやらかす


演奏会でやらかしたといっても、なんだその程度かと思われる諸兄もいらっしゃると思います。

そんなやらかし猛者の方にも満足していただけるようなやらかしをしたので、ご報告というのか、モヤモヤした後悔を書き捨てるというのかわかりませんが書いてみます。


演奏会の本番中に倒れかける


プログラムは前半はR・シュトラウスのブルレスク、後半はマーラーの交響曲第5番、指揮は我らがシェフ、マエストロ・ビチコフでした。

この週は3回演奏会があり、その一番最後の演奏会の出来事です。

前半のブルレスクは拍子をとるのが厄介な曲でしたが、なかなか調子良く演奏することができました。


演奏会の後半が始まり、マーラー5番の第1楽章最後の地味になかなか難しいソロを終えた後に少しめまいを感じました。

マーラー交響曲第5番
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第2楽章に入ってからもめまいは収まらず、さらにはだんだんと両手が痺れてきて動かなくなりました。

やばいなーと思いながら、いくつか演奏しなければならない箇所を休んでみましたが、どんどん悪化。

しまいには呼吸が苦しくなって倒れそうになったため、演奏中にもかかわらずステージから降りました。

演奏中にステージから帰るのは人生で初めてだったので、立ち上がった時は少しドキドキしました。

もしぶっ倒れて演奏会を中断や中止するよりはマシなので、我ながら朦朧とする意識で良い判断だったと思います。

楽譜はセカンドフルートを演奏していたロマン・ノヴォトニーに急に押しつけ、演奏中のホルンの同僚の前を通ってステージを降りました。

チェコフィルに来てから、いつも同僚に迷惑をかけっぱなしなので足を向けて寝ることができません。


その後


ステージを降りてソファーで倒れていると、事務局の人や職場のドクターがワラワラと来て診察を受け、しばらく休憩してから帰り、念のため次の日の朝にPCR検査を受けました。

演奏会当日の朝に受けた検査、ともに陰性で少し安心しました。

その後、病院で検査を受けましたが過労とストレスから起こったようです。

念のため血液検査も受けましたが、採血中に自分の血が思ったより黒かったのを見ていたら気が遠くなり、危うく失神しかけました笑

その後も10日ほど腕に違和感が残っていたり、心臓の辺りがおかしかったり、歩くとフラフラしたりと不調を感じていましたが、ようやく元気になってきました。

目の下になんだかクマができていましたが、それもだいぶ消えてきました。



倒れるまでの1ヶ月間、毎朝4時起きで職場に行き、超絶ヘビーな演目プログラムに加え、ストレスMAXのビザ申請、引越し手続き、大使館での手続きなどに追われ、家に帰ればストレス発散にゲームをしながら高い度数のお酒を飲んで寝る生活が続いていました。


終わりに


今回は幸いにも大事に至らずまた元気になりましたし、職場の待遇面で起こりかけていた問題が解決したりと、何だかんだで良い面もありました。

同僚が心配して連絡をくれたり、知人がホームドクターを紹介してくれたり、かたやSNSに悪口を書いている人がいたりと、今後誰とどう関われば良いのかがはっきりと見えたのも、僕にとって怪我の功名でした。


そして、生きる上で最も大切なことは心と体の健康だなあと痛感しました。

僕自身、身体精神ともに丈夫な方だと思っていましたが、全くそんなことはありませんでした。

事実、倒れる直前まで自分のコンディションは絶好調と感じていましたし、4時間程しか寝なくても眠くならず、頭の中では音楽がずっと鳴っており、動き回ってもあまり疲労を感じませんでした。

なんとなくおかしいという気持ちは少しありましたが、どうやら身体のサインを感じ取れないほど感覚が麻痺していたようです。


だからといって今後も自己管理を徹底するつもりはあまり無いので、来年からは『絶対に頑張らない』を目標にさらにダラダラ生活を極めていけるよう、より一層頑張ろうと思った次第です。

今日はたこ焼きを丸く焼く練習をしていたら、一日が終わりました。


みなさま、くれぐれもご自愛し、良いお年をお迎えください。



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