楽譜の書き込みについて
オーケストラで演奏していると、時々楽譜の終わりに書き込まれた日付を発見することがあります。
今回は、私が使用した楽譜に書き込まれていた興味深いものをいくつかご紹介します。
100年以上前の書き込み
先日、ヤクブ・フルシャ指揮、チェコフィルハーモニーでヨーゼフ・スク作曲「夏物語」を演奏した時に使ったフルートのパート譜の書き込みは、大変に興味深いものでした。
1913年4月19日ブルノにて、指揮はおそらくヴィレーム・ツェマーネク(Vilém Zemánek)。
彼はヴァーツラフ・ターリヒの前任の指揮者で、当時経営難だったオーケストラを立て直しました。
しかし、権威主義的な振る舞いが団員から嫌われ、1918年にその職を辞しています。
100年以上昔の楽譜が、いまだに現役で演奏会で使われている事に驚くばかりです。
100年以上昔の楽譜が、いまだに現役で演奏会で使われている事に驚くばかりです。
このような古い楽譜は、練習で痛めないように大変に気を遣います。
同じ楽譜の違う場所には、ターリヒが指揮を振ったときの書き込みが残されていました。
同じ楽譜の違う場所には、ターリヒが指揮を振ったときの書き込みが残されていました。
当時はスペイン風邪が流行していた
次の楽譜は、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番『皇帝』のフルートパート譜の終わりに書き込まれていたものです。
1918年と1919年当時は、ヨーロッパでもスペイン風邪が猛威をふるっていました。
先達がどのような気持ちでこの日付を楽譜に書き込んだのか、思いを馳せてしまいます。
楽譜に何を書き込むべきか
楽譜に何を書き込むべきか、考察してみます。
ソロ曲の場合には、もっと自由に書き込むことができます。
レッスンで先生に教えてもらったことも丁寧に書き込んでおくと、後で見返した時に役に立つことがあります。
後年になってから、先生の言っていた意味がわかるもこともあるので必ず書き込んでおくと良いでしょう。
オーケストラのパート譜の場合には、指揮者の指示は必ず書き込んでおく必要があるでしょう。
例えば指揮者から、ピアノのところをフォルテで演奏するように要求されたり、クレッシェンドの位置などは書きこんでおかなければなりません。
テンポが変わるなど、指揮者に注意しなければならない箇所には、目や眼鏡マーク👓が書き込まれます。
テンポが遅くなる箇所では、~のような記号が音符の上に書き込まれます。
ページをめくった後、前のページに休符が何小節あるかも書き込んでおくと良いです。
ページをめくった後に不安になって、もう一度前のページを覗き返すことがなくなります。
その他、楽譜のミスや、変え指、耳栓が必要な場所などは書き込んでおくと良いでしょう。
良くない書き込み
必要のない書き込みでありがちなのは、楽譜の音符に丸を書いてしまうことでしょう。
レッスンで先生に言われことや、指揮者に何かを指摘された箇所に、ただ丸が書いてある楽譜をよく見かけます。
このような書き込みは、後で見返した時になぜ丸がついているのかわかりませんし、ただ楽譜が見づらくなるだけなのでやめた方が良いでしょう。
丸を書き込むのではなく、必要な事項を言葉や記号で明確に書き込むと良いです。
臨時記号
音を間違えやすい箇所に臨時記号を書き込んでおくことは必要ですが、全ての音符に臨時記号を書く必要はありません。
時々回ってくるレンタル譜には、臨時記号がたくさん書き込まれていることがあり、練習を始める前にまず消しゴムで消さなければならない事があります。
調号の横に臨時記号が書き込まれている謎の書き込みもあります。
次のような書き込みは、練習する気すら無くしてしまうのでくれぐれも遠慮していただきたい😡
何はともあれ、レンタル譜には不要な書き込みをせず、また演奏後には必ず消しゴムで消して返却しましょう。