使用している楽器について(ムラマツとマンケ)
今日は楽器の日ということで、私が普段吹いている楽器をご紹介します。
最近では、木製のフルートを使っている方が増えてきましたが、金属ボディーに木製頭部管を使っているフルーティストはあまりいません。
この組み合わせのメリットや、デメリットなどお伝えできればと思います。
ムラマツ
ムラマツの24k金、リングキーH管です。
トーンホールは引き上げです。
キーの継ぎ目には何箇所か、カバーをつけてもらいました。
この楽器を吹き始めた頃に、何度かキーの動きが悪くなる事があったのでムラマツでつけてもらいました。
同じような問題がある方は、ムラマツのリペアの方に相談し、カバーをつけてもらうと良いと思います。
特に、私のように緊張すると手に汗をかいてしまう方にはオススメです。
ヨーロッパに来てからは、日本にいた時のように頻繁に楽器調整に出すことができないのでもう2年近くフルートを何も調整していませんが、特に問題は起こっていません。
ムラマツの頭部管
私はムラマツの金の頭部管と、マンケのグラナディラの頭部管を、曲によって使い分けています。
ムラマツの頭部管には、ブルズアイというところから売られている「フルートバランス」というクラウンをつけています。
フルートバランスは、クラウンに重りがついているため通常のクラウンの2倍ほどの重量があります。
そのため、ダンベルのように重たい楽器になっています。
フルートバランスのクラウンには、穴が空いています。
音色はムラマツのオリジナルのクラウンと比べると暗くなりますが、吹き込んでもオーバーブロウになるまでの幅が少し広がるので使っています。
マンケ
マンケというドイツのメーカーのグラナディラ製の管に、チューブと歌口が14k金の頭部管です。
木製頭部管を使い始めたきっかけ
木製の頭部管を使おうと思ったきっかけは、ハンブルクで学生をしていたころに聴きに行ったNDR(エルプフィルハーモニー、旧称は北ドイツ放送交響楽団)の演奏会でした。
NDRに客演していた、元ベルリン・フィルハーモニー首席のアンドレア・ブラウ氏が吹いていた、ブラウンのフルートの音色が素晴らしすぎて衝撃を受けました。
ブラウンのピッコロは日本でも有名ですが、以前はフルートも製造していました。
しかし現在はピッコロのみ製造しており、フルートを買うことが出来ませんでしたので他のメーカーのグラナディラの頭部管を探していました。
木製の頭部管を製造しているメーカーはたくさんありますが、歌口に金属を採用しているメーカーはなかなか見つかりません。
フルートに詳しい友人から、マンケがそのような頭部管を製造していることを教えてもらいました。
マンケ氏に連絡をとって工房に伺い、試奏させてもらってとても気に入ったので購入しました。
レスポンスが驚くほど良く、ムラマツの頭部管とくらべて細かいコントロールが効きます。
木製の頭部管は金属製のものよりも音がよく通るので、オーケストラの中でも他の楽器に音がかき消されることがありません。
その分、周りの楽器の音色に溶け込ませることも格段に難しくなるので、曲ごとにムラマツの金属の頭部管と使い分けるようにしています。
テオバルト・ベームもフルートの材質に関する研究で後年、木製の頭部管に金属のボディーという組み合わせが最も良い音色であると書いています。
残念ながら見た目があまりよろしくないせいか、この組み合わせのフルートを吹いている奏者はかなり少ないです。
木製のボディーよりも金属ボディーのほうが、音色にまとまりがあると感じたのでこの組み合わせで使っています。
もし楽器店で試奏する機会があれば、ぜひ試してみてください。
ちなみに木の頭部管は、金の頭部管を買うよりも断然安いです。
木製頭部管の欠点
木製のフルートの最大の欠点は、メンテナンスにかなり気を遣うことです。
コンディションが日々変化するので、オイリングや乾燥といった作業が欠かせません。
金属の場合には全く感じませんが、木製の楽器は演奏していると鳴り方やレスポンスがどんどん変化します。
そのため、演奏後には管の中の水分をよくふき取って、ケースから出したままにして乾かしています。
2時間以上吹いていると楽器の調子が悪くなるので、本番のある日には演奏時間を計算して練習しています。
それから演奏前にはオイリングを必ずしています。
頭部管の内部に、アーモンドオイルを塗っています。
人によっては、オイリングをするのは2週間に1度程度が良いと言われることがあります。
頭部管の製作者であるマンケ氏は、毎回演奏前に塗ったほうがいいとおっしゃっていたので、私はそうしています。
その方が楽器がよく鳴り、吹きやすいと感じます。
オイルもクルミやオリーブオイルを試しましたが、アーモンドオイルが一番音色のバランスが良かったです。
クルミは粗が目立ち、オリーブオイルはガサガサとした音色といった印象でした。
私の使用しているアーモンドオイルは、サラダにかける食用のものをしようしています。
化粧用のアーモンドオイルを使ったところ、唇が荒れたので注意が必要です。
反射板の位置
反射板の位置を標準よりも歌口に近いところの0.7mmほど移動させています。
レスポンスがよくなるのと、3オクターブの音程が上ずりづらくなります。
マンケの頭部管の反射板は、標準の位置では触った時に段差が出来ないようになっています。
反射板の位置を勝手に触ることは良くないとされていますが、私は色々と試したほうが良いと思います。
反射板は0.1mmほどクラウンを回すだけでフルートの音色が変わるので、慎重に行ないます。
このように、油性マジックで元の位置に印をつけてから、慎重にクラウンの位置を決めています。
反射板の位置を変える作業は、くれぐれも自己責任でお願いします。
私はこの作業に、静かな音響の良い広い部屋で1週間ほどかけ、かなり集中して行なっています。
月に1度ほど、反射板の位置を修正し、ボンドで簡単に固定しています。
サムポートなど
初心者がフルートをうまく支えられない時に使用するサムポートというものがあります。
木製のフルートを吹いた時に、なんだか指が回りやすいと思ったことがきっかけで、フルートを支える位置の外周を大きく出来るものがないか探した結果見つけました。
楽器が支えやすくなり、速いパッセージが演奏しやすくなりました。
それから理由はよくわかりませんが、このパーツを付けたほうが楽器の鳴り、特に低音域が吹きやすくなります。
終わりに
以上で私の楽器紹介が終わりです。
シンプルな見た目のフルートは美しいですが、私はより吹きやすくて音楽の表現がしやすい楽器のほうが価値があると思います。
そのため、少しでも演奏しやすいように色々とこだわってしまいました。
色々とこだわりが強すぎて記事が長くなってしまいましたが、読んでいただきどうもありがとうございました。