なぜ技巧的な編曲ばかりするのか

ジブリ作品の音楽を編曲していると、なぜそんなに難しくするの?と時々言われることがあります。
今回は、その疑問に対するお答えと、ついでになぜ最近ジブリの編曲をしているかも書いてみようと思います。

なぜ技巧的な編曲ばかりするのか


これまで編曲したもの


トトロからはじまり、ラピュタ、魔女の宅急便を作りました。

ちなみにこんな感じです↓

トトロ


ラピュタ



魔女の宅急便




難しい理由


難しくなってしまった理由は、主に次の3つです。

1. タファネル


編曲する際に難しくなってしまう理由の1つは、フルートの日課練習でおなじみ19世紀の大フルーティストであったポール・タファネルを強く意識しているからです。

19世紀、有名なオペラの旋律をフルートとピアノのために編曲することがフルーティストのあいだで流行っていました。

フルーティストの皆さんならよくご存知の、ボルヌ作曲「カルメン幻想曲」なども、ビゼーのオペラ「カルメン」の旋律を基に作られています。

タファネルもまた様々なオペラをフルートとピアノのために編曲しています。

「ミニョン」、「魔弾の射手」などは、フルートの専門家を目指すためには必ず演奏しなければならないレパートリーとなっています。

初心者のために簡単に演奏できるジブリの楽譜はたくさん発売されています。

しかし、専門家のためのレパートリーとして演奏できるような楽譜は、あまり売れないためかほとんど見当たりません。

そういうわけで、タファネルの幻想曲くらいの難易度で演奏できる編曲を目指したため、技巧的になっております。

2.フルートの特性


ジブリ音楽の作曲家、久石譲さんの書いた旋律をそのままフルートで吹いても良いでしょう。

しかし、フルート1本で旋律を演奏しても、原曲の様々な楽器で奏でられるカラフルな響きには到底及びません。

そこで、フルートで演奏する意義というか、魅力を発掘してゆくとだんだんと技巧的な編曲に仕上がってしまいます。

フルートという楽器は、旋律を奏でる楽器というよりも、旋律を装飾しながら演奏するのに適した楽器だと、編曲しながらつくづくと感じました。

3.とにかく色々な方に日本の音楽を聴いてもらいたい


日本人で最も有名な作曲家は誰だろうと考える事があります。

何人かの名前が頭に浮かびますが、僕は久石譲が日本でも海外でも最もよく知られたお名前だと思っています。

今僕はチェコに住んでおりますが、こちらで演奏会をするときに選ぶレパートリーはほぼ西洋人作曲家の作品です。

邦人作曲家の作品を演奏することもありますが、ほとんどの作品はつまらないよくわからない現代曲です。

そのため、お客さんにもう少し分かり易い、かつ日本の響きのする作品が無いかな、無ければ作れば良いと思って編曲しています。

いつかジブリ作品を集めて演奏会をしたいなと夢をみつつ、今日も編曲作業をしようと思っています。

編曲は楽しい


編曲は、僕にとってとても楽しい作業です。

素敵な旋律を、フルートで魅力的に演奏するためにはどうしたら良いだろうと考えているとあっという間に時間が過ぎてゆきます。

これまでも何曲も編曲してきましたが、初めて久石さんの音楽を編曲したのは、トトロでした。

ふと、フルート1本でトトロを演奏できたら楽しいだろうなと思いつき、何となく即興でピロピロ吹いてみたら意外と形になりそうなので楽譜に書き起こしてみました。

こんなもの作ったらトトロのファンの方に怒られるかもしれないと思いながらユーチューブに動画を上げたところ、意外に好反応をいただき、製作した楽譜もPiascoreでいまだに売れ続けていて驚きます。


現在は「千と千尋の神隠し」の音楽を編曲中で、その後は「ハウルの動く城」で一区切りにしようかなと漠然と考えています。

ほぼ完成しているボロディンの「だったん人の踊り」や、コロナ禍が始まった頃に作り出したラヴェルの「ダフニスとクロエ 第二組曲」の編曲もいい加減に完成させたいと思います。

こんな編曲家ですが、予期せず多くの方に熱心な応援をいただき本当にありがたい限りです。

編曲をしてほしいというご要望やご意見など、気軽にツイッターのコメントに寄せていただけると嬉しいです。




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