𝄞𝄞音楽記号の話

先日、Twitterで音楽記号について書いたところ、多くの皆様に興味を持っていただきました。音楽に携わるものとして、嬉しい限りです。
たくさんのRTやイイね、どうもありがとうございました。

普段あまり目にする事のない音楽記号を取り上げましたが、どのように使われているのか疑問に思った方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、実際にこれらの音楽記号が使われている譜例をいくつか見たり、音を聴いてみたいと思います。

音部記号


ツイッターには、次の音部記号を上げました。

二重ト音記号

↑これは、二重ト音記号というもので、普通のト音記号よりも1オクターブ低いという意味だそうです。
ちなみに、ト音記号を「トーン記号」と誤解しがちですが、これはト音、要するに"ソ"の音を表すアルファベットのGが元になった記号です。
これはハ音記号のアルト譜

昔の楽譜を見ると、このハ音記号が使われています。今日では主にビオラ奏者がアルト不評、もといアルト譜表を使っていますが、バロック以前までは頻繁に使われていました。

バッハのインベンションとシンフォニアや、平均律クラヴィーア曲集の手稿譜には、ト音記号の代わりにハ音記号が使われています。
ヘ音記号

↑これはヘ音記号です。19世紀までは、現代と渦の向きが逆になっていますが、読み方は一緒です。
これはヘ音記号??

↑一見するとヘ音記号ですが、よく見ると一本下の線に書いてあります。これは屁音記号と言います.....というのは冗談で、本当はバリトン記号というイカツイ名前がついています。
ヘ音記号はアルファベットのFが基になっており、黒丸が書かれた線がファの音であることを意味します。

上例のバリトン記号の黒玉の部分がファになります。一段下がるだけでヘ音記号に重みがデデーンと増し、バリトンの貫禄が表れるような気がしませんか?

音部記号の実例


これらの見慣れない音部記号は、皆さんのよくご存知の大天才作曲家、モーツァルトの自筆譜を開くと発見することができます。

モーツァルト:フルートハープのための協奏曲より


二重ト音記号は、ホルンパートに書かれており、普通のト音記号よりも1オクターブ低い音が演奏されます。

唐突にここで宣伝となりますが、来年2022年2月9−11日にチェコフィルハーモニーでは、この曲を演奏するので、ぜひプラハまでぷらりとお越しください。演奏会でお待ちしております。

詳細はチェコフィルのホームページ(英語)から。

モーツァルトの他のオーケストラ作品の自筆譜を見ても、ホルンパートは二重のト音記号が書き込まれています。
次の例は、モーツァルト作曲、交響曲第38番「プラハ」K.504の冒頭の自筆譜です。

二重ト音記号が2つ書き込まれています。

モーツァルトの書いたヘ音記号は、現代の向きとは逆になっています。
チェロパート

同様にビオラのパートには、現代とは少し違う形のハ音号が書き込まれています。


↓参考音源: マンフレート・ホーネック&チェコ・フィル、エステート劇場にて。

微分音程


現代音楽でもよく使われる四分音程です。これは半音よりもさらに半分狭い音程です。
上の譜例をドイツ音名でいうと、gif,gesefなどとなります。

次の臨時記号は、イワン・ヴィシネグラツキーという作曲家が用いた記号です。
左の臨時記号は、12分の7音下げます。右の臨時記号は、12分の11音(ご指摘いただき確認したところ、6分の5音でした。大きな過ちをおかしてしまい、あいすみません)あげます。何だかよくわからないのですが、そういう事だそうです。

ヴィシネグラツキーは1893年にロシア帝国のサンクトペテルブルクで生まれ、20世紀にフランスで活躍しました。
四分音程の作品から、さらに微分音程の世界に踏み込み、六分の一音程、十二分の一音程など、最終的に1オクターブを71等分した超半音階技法を使い作曲しました。

↓参考音源。
https://youtu.be/pKZqbV2vv0I

ヴィシェネグラツキーの詳細に関しては、以下のホームページに詳しいです。(英語)


ヘンツェのフェルマータ


これはハンツ・ヴェルナー・ヘンツェというドイツの作曲家が、作品中に用いたフェルマータです。
普通のフェルマータよりも、より長く伸ばすという意味です。

↓参考音源
https://youtu.be/uU6GYJ6uW2o

ちなみに、ヘンツェは半分になったフェルマータも多用しており、こちらの場合には普通のフェルマータよりも短くという意味です。上の参考音源にも両方のフェルマータが使われています。


このほかにも、あまり知られていない音楽記号はまだまだたくさんあります。

9/8拍子の略記号

この記号は9/8拍子の略記号だそうです。
ネウマ譜には、3と書かれたものがあるのですが、縦線(diminutum)付きの譜例は見つかりませんでした。もしかすると、ロマン派あたりの作品で使われているかもしれません。
ご存知ならTwitterにご一報いただけると、大変嬉しく思います。

これらの音楽記号がもっと知りたい時は


Museスコアなどの、オープンソースで公開されている楽譜作成スコアをのぞいてみると、たくさんの音楽記号を見つけることができるので、興味がある方はぜひ利用してみてください。

Museスコアの場合には、表示→マスターパレットで様々な記号を見つけることが出来ます。



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