私が普段やっている、オーケストラ作品の練習方法

オーケストラで活動していると、本番一週間前、場合によってはリハーサルや本番の当日に、急に演奏を依頼される事もあります。

音楽家によってそれぞれやり方は異なりますが、オーケストラの曲に取り組むために私が普段どのように準備をしているか書いてみます。
物好きな方の暇つぶしにでも目を通していただければ幸いです。

乗り番を決める


オーケストラの公演は、数年先までプログラムが大体決まっています。
もちろん、突然演奏会が追加やキャンセルになる場合はありますが、まずは半年先までの公演の演目や指揮者、ソリストにざっと目を通します。

私が働いているチェコフィルハーモニーには首席奏者が二人いるため、もう一人のフルート首席のアンドレア姉さんと話し合って乗り番を決めています。
勤務日数が偏ったりしないよう、なるべく公平になるように決めてゆきます。
私の同僚はフェア意識が高いので、乗り番は慎重に決めないと同僚から圧力がかかります笑

大体、3ヶ月から半年先までの乗り番が決まるので、早急に大変そうなプログラムや録音、ツアーの演目をチェックし、可能な限り早めに楽譜を手に入れて目を通しておきます。

楽譜が手元に届いたら


ほとんどの楽譜は本番のおよそ1ヶ月前から2週間前に、オーケストラのライブラリアンから借りることが出来ます。場合によっては本番の1週間前に楽譜が届くことがあるので、集中して譜読みができるようスケジュールを調整しています。

私の場合、楽譜が届いたらまずは簡単に譜読みします。とりあえず難しそうな箇所をパラパラっとさらったあと、音源を聴きながら一緒に吹いてみます。

小節を数えるのが難しかったり入りが難しい場所、集中して練習しなければならない場所、練習しなくても良い箇所を把握しておきます。一度曲を通すことで、大まかな全体の構造や、テンポを把握できます。

あとはリハーサルの始まる日まで逆算し、難しい箇所をどのくらい練習するか決めます。

本当はスコアを読んで、じっくりと時間をかけて音楽の解釈をして自分のものにしてから演奏したい所ではありますが、この方法だと時間がかかってしまい現実的に不可能です。

いつか暗譜で演奏してみたいなあと夢をみながら、日々譜読みに追われています。

抜かりなく楽譜に目を通しておく(重要)


オーケストラの曲の場合、簡単に見える楽譜や音符が意外と難しい時があります。

特に静かでゆっくりしている楽章は、楽譜は簡単に見えますが、実際にオーケストラで演奏してみると予想よりも難しい事があります。

想定していたよりも静かな音量で演奏しなければならなかったり、他の楽器と音程が合わなかったり、テンポが想定よりも遅くて息が持たない等々、一人で練習している時には気がつかなかった問題が常に発生します。

逆に、速いパッセージばかりが続く曲では、譜読みに時間がかかりますが演奏する事はそれほど難しくない場合が多いです。

本番でミスをするのは、想定していない場所でほとんど起こります。一見、簡単そうに見える音符や休符も、様々な事故を想定しながら丁寧に練習しておきます。

長い休符も数えておく


オーケストラの作品によっては、100小節以上も休みが続くことがあります。よく知っている曲なら数える必要はありませんが、初めて演奏する曲などは音源を聴きながら、休符の終わりに演奏し始める箇所を確認したり、休符を数える練習をしておきます。
どこでどの楽器が、目立つメロディーを演奏しているか書き込んでおくと良いです。

スコアは常にすぐ見られるように


練習の際には、スコアはいつもすぐに見られるようにしておきます。
最近では、iPadにIMSLPなどでダウンロードしたスコアを入れておき、気になったときにはすぐに確認できるようにしています。
私はPiaScoreというアプリに楽譜やスコアを入れています。

電子楽譜のメリットは、どれだけたくさん入れても重量が増えないことです。
練習中にチューナーやメトロノームもすぐに使えるので、もはや練習には欠かせることができなくなってしまいました。

練習時間の効率を考える


3回ほど吹いてもなかなか上手く演奏できない箇所の場合、次の選択肢からどれかを選ぶ必要があります。

  1. 替え指など、やり方を変える
  2. 集中力の問題
  3. 何度も練習して身体に覚え込ませる
  4. 誤魔化す方法を考える

1. 替え指など、やり方を変える


出来ない箇所を何度も吹くことは、時間の無駄になるばかりか、疲れたり悪い癖がついたりと悪影響があります。

替え指を考えたり、音名を歌ってみる、アーティキュレーションやリズムを変えてゆっくり練習するなどの方法で冷静に対処すれば、大抵の場合どうにかなります。
特に替え指は、練習の無駄な時間を減らすために欠かせないテクニックなので、いつでもさっと使えるように色々と知っておく必要があります。

オーケストラで私がよく使っている替え指リストは、以下にまとめているのでご参考までに↓


2. 本番での集中


本番では、普段の練習よりも集中力を発揮する事が出来るので、火事場の馬鹿力を発揮して難しいフレーズを乗り切る事もできます。練習やリハーサルではうまく出来なくても、本番で成功することが何よりも重要です。

ただし、これは身体に負担がかかるので、本番が続くと不調になる事があります。
また、リハーサルで同僚にも迷惑をかけることになるので、あまりその場限りの集中力には頼りすぎないほうが良いと個人的には思っています。

3. 身体に覚え込ませる


本番まで比較的時間がある場合には、何度もゆっくり丁寧に練習する事で、身体に覚え込ませる事ができます。
小手先の技術ではどうにも出来ないような難しいフレーズがある場合、乗り番が決まった時点で早めに練習を開始する必要があります。

オーケストラ・スタディーの本に載るような難しい箇所は、どれだけ早く練習を始めても早すぎるということはありません。
フルート奏者としての人生をかけて、全力で取り組む必要があります。

4. 誤魔化す


どうしてもできない場合には、誤魔化すことも必要です。ブレスが続かないために音を省略したり、ほかの楽器の音に隠れるなど、いくつか方法があります。勢いで乗り切ることも必要です。
個人プレーよりもオーケストラ全体としての表現が何よりも大切です。
演奏に化粧をすることは悪いことではありません。

音程が合わない箇所は弱く吹いたり、タイミングが周りと合わないときはタンギングをボヤかすなど、オーケストラの響きが自然に聴こえるのであれば、ありとあらゆる手段を使いましょう。

いざ演奏会へ


演奏会当日の過ごし方と、気をつけていることにも書きましたが、演奏会当日に特に気をつけなければいけないことは、コンディションと時間の管理です。

本番直前まで練習していて、いざ本番中ではフラフラになっていたり、緊張してうまく演奏できなかったり、忘れ物をして本番に集中できなかったりなど起こらないように、心にも時間にも余裕を持って臨むことが大切です。



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