小指、きたえてますか?【フルート】
小指は、上手く動かすことがとても難しい指です。
フルートを演奏していると、難しいフレーズに出会うことがありますが、ほとんどの場合は小指がその難しさを冗長しています。
今回は有名なクラシックの作品から、フルーティストの小指が絡まるようなフレーズを集めてみました。
右手小指の運命
運命は、このように扉を叩く
ベートーヴェンの交響曲第5番ハ短調『運命』は、後世の作曲家にも大きな影響を与えました。
ジャジャジャジャーンというモチーフは、クラシック音楽をあまり聴かない方もよくご存知です。
そんな『運命』のモチーフに影響された作曲家の一人に、グスタフ・マーラーがいます。
マーラーの作曲した交響曲第5番嬰ハ短調にも、『運命』のモチーフが使われています。
冒頭のトランペット・ソロを聴けば、マーラーが『運命』を意識しこのモチーフと格闘することを宣言しているように感じます。
大作曲家ベートーヴェンへの挑戦の、開始のラッパでもあります。
そんなマーラーの鬼気迫る音楽に、従業員である我々フルーティストはなすすべもなく従うほかありません。
そしてフルーティストの小指は、限界までその運動機能を発揮することを要求されます。
運命の赤い糸は、やがて小指に絡まり....
自然の中で、夏物語
チェコ生まれの作曲家、アントニーン・ドヴォルジャークは、チェコ人らしく自然を愛しています。
そのため彼の作品には、自然をモチーフとしたものが多くあります。
『自然の中で(V přírodě)Op.91』という曲は、日本ではあまり演奏される機会がありませんが、チェコではよく演奏される名作です。
ハトや小鳥の鳴き声の描写があり、フルートにもソロがあったりと演奏するのも聴くのも楽しい曲です。
美しい自然の音楽を楽しんで演奏していると、フルーティストの小指に突如として難所が訪れます。
同じくチェコ生まれの作曲家、ヨセフ・スクはドヴォルジャークの愛弟子であり、ドヴォルジャークの娘と結婚しました。
スクの作品には、ドヴォルザークの作品の引用が使われることが頻繁にあります。
師匠ドヴォジャークと同じく、『夏物語 ( Ein Sommermärchen)』には、フルーティストの小指を苦しめるフレーズが出てきます。
音大生が苦しめられる2大曲
音大でフルートを勉強していると出会う小指を困らせる2大曲は、ニールセンのフルート協奏曲と、ジョリヴェの『リノスの歌』でしょう。
デンマークの作曲家、カール・ニールセンのフルート協奏曲は、内省的な音楽表現と技巧が上手く取り入れられた名作です。
しかし、第1楽章の提示部の経過部に、小指を苦しめるようなフレーズが出てきます。
フランスの作曲家、アンドレ・ジョリヴェの有名な作品『リノスの歌』の冒頭のトリルも、地味に難しい左手小指を苦しめるフレーズになっています。
参考:トリルの練習
2nd.フルートにも絡まる小指の赤い紐
ほとんどのオーケストラ作品では、2nd.よりも1stフルートのほうが目立ちます。
しかし、セカンドフルートにも難しい仕事は同じだけあります。
そしてセカンドフルートの場合は音域が低いためか、ファーストフルートよりも小指が難しいフレーズが出てきます。
有名な例では、スメタナ作曲交響詩『わが祖国』の第1曲目、『高い城』の最後にセカンドフルート奏者の小指を苦しめる、フルート2本のフレーズが出てきます。
ほとんどの人が知りませんが最も小指のために難しい曲は、リムスキー・コルサコフの最も有名な曲、『熊蜂の飛行』です。
小指の練習をしすぎると腱鞘炎になる可能性もあります。
くれぐれも小指を大切に。